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祇園祭前の京都で読む『宵山万華鏡』


宵山万華鏡 (集英社文庫)宵山万華鏡 (集英社文庫)
(2012/06/26)
森見 登美彦

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 確かジェイムズ・ジョイスの翻訳で有名な柳瀬尚紀の本に、最も贅沢な小説の読み方は、その本が書かれた土地で読むことだと書かれていました。例えばジョイスの『ユリシーズ』なら、Bloom’s Dayと呼ばれる作品で描かれる6月16日のダブリンで、パブでギネスを飲みながら読むのが最高の贅沢であり、現にこの日はダブリンに世界中のジョイスファンや研究者が集まります。

 先日ちょっとした用事で日帰りで京都に行くことになり、もうすぐ祇園祭ということでちょうど読みかけだった森見登美彦の連作短編集『宵山万華鏡』を持っていきました。森見登美彦は以前は読まず嫌いをしていた作家の一人でした。京都の大学で非モテのぐだぐだな学生生活を送る学生を主人公にした作品が多く、同じような境遇の身としては、身内の恥をさらして作品にしているように見えて近親憎悪的のようなものを感じていたからです。しかしちょうど1年ほど前、友人が『宵山万華鏡』を読んでいるのを見て、祇園祭と京都のことが懐かしくなり、『夜は短し恋せよ乙女』などの初期作品を読んでみると、風俗描写やマジックリアリズム的イマジネーションが一流なだけでなく、作品の構成力や古典を愛読していることがわかるしっかりとした文体など、学生以外に人気があるのもうなずける内容でした。

 『宵山万華鏡』は祇園祭のクライマックス、宵山の一夜を舞台にした6つの連作です。万華鏡の形を模してか2つの短編がペアになる2×3の構成となっていて、3つの出来事がそれぞれ2つずつの視点から描かれます。3つの物語は登場順に、宵山の雑踏ではぐれてしまった姉妹の話、異形の者たちが跋扈する祇園祭の闇にとらわれた男の話、15年前の宵山の雑踏に姿を消した娘を追って、宵山の夜を何回も繰り返す画家の話で、それぞれの物語が複雑に絡み合い、いくつかの中心的なモチーフ(人ごみを駆け抜けていく赤い浴衣の少女たちなど)が繋ぎ止めている様子はまさに万華鏡のようです。また『夜は短し~』のエピソードの一つ、ゲリラ演劇『偏屈王』の関係者が登場する抱腹絶倒の物語もあれば、短編集『きつねのはなし』のように京都という街の闇を掘り下げた、底知れぬ不気味さをたたえた物語もあり、作者の作風の幅の広さを感じさせるものでした。

 京都での用事が終わった夕方から、三条河原町のドーナツで有名な老舗喫茶店でこの短編集を読んでいると、あと数日で始まる祇園祭(クライマックスは宵山と17日の山鉾巡航ですが、祇園祭自体は7月の1か月間を通して行われます)の、京都という街がさらに一歩非現実的空間に近づく季節の空気を味わえたと思います。7月の京都を訪れることのできる幸運な人は、ぜひこの短編集を持っていくことをお勧めします。

P.S. ちなみに祇園祭の鉾を引いているのは大部分が学生バイトで、僕も大学1回生の時にやったことがあります(給料安かった)。現実に引き戻して申し訳ない。

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大熊座から来た男

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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