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バタイユの思想とエネルギー問題 2

 そして、この蕩尽が最大規模で、最悪の形で現れるのが戦争です。バタイユは『至高性』の最後の章で「全世界を巨大な火薬庫に変えたこの前例のない蓄積を、戦争なしに使いつくすこと」(p.334)が重要と述べています。しかし、化石燃料によるエネルギーを過剰に使うことが問題となる現代では、先進国のライフスタイル(必要以上に大きな住宅、自動車や航空機の過剰な利用、工業製品の不必要な消費等)も戦争に匹敵する危険な蕩尽となります。

 しかし人間とは常に過剰なもの、生のエネルギーを持て余している存在であり、そのことを否定して倹約や自制を強要するような環境対策は人間のありように反するものです。人間、特に若い人たちは未知のもの、新しいもの、格好いいもの、美しいもの、気持ちのよいものを渇望し、そのために文化、芸術、科学、技術などを発展させてきました。そしてそれらを商品化し、流通させる経済もともに発展させてきました。これらを否定することは人間の歴史を否定することです。

 それならば、その人間が生まれながらに持つ過剰なエネルギーを、化石燃料をあまり利用しない活動に向け、それらを通じて経済活動を活発にすることが地球環境にとっても社会にとっても最善の道になるのではないでしょうか。前にファッションを環境負荷が少なく単価の高い消費財として、環境と経済の両立にとって重要なものと書きましたが、その観点からは芸術やスポーツといった活動は理想的です。文章を書く、絵を描くためには最低限鉛筆一本だけでよく、歌を歌う、ダンスで表現するなどは自分の体だけで事足ります。ボール一個と少しの設備があれば様々な球技ができるし、陸上などはシューズ一足あればできるものも多いでしょう。そして優れた芸術作品やアスリートのプレイを全世界に配信するのは、インターネットであまりエネルギーを用いずに瞬時に行うことができ、それらは高い商品価値を持ちます。

 そして芸術やスポーツは生の過剰なエネルギーを遊戯的に蕩尽し、それを通じて至高性を獲得するかもしれない活動でもあります。古代の王や君主のように、自らの命を惜しまず闘うことで至高性を獲得した人物はヒーローであり、民衆にとっての憧憬の対象でありました。現代の芸術家やスポーツ選手の役割はそれと同じでしょう。バタイユは芸術が王の持つ至高性を継承することについて論じていて、「至高な芸術は、可能なるものの極限に至る」(p.324)と書いています。過剰な富の蓄積と浪費を繰り返すことも至高性につながるかもしれませんが、ほとんどの場合それは自己顕示という有用性を帯びて至高性から最も遠いものへと堕落します。

 これより、化石燃料が今までほど使えない時代における社会の姿、価値観が見えてきたのではないでしょうか。今まで物質的生産と消費に費やされてきた、人間の持つ過剰なエネルギーを芸術やスポーツといった遊戯的、創造的なものに費やすこと。それは地球環境にとって有益であり、人間性の回復にもつながります。

 1960年代、映画『イージー・ライダー』でピーター・フォンダとデニス・ホッパーの乗るハーレー・ダビッドソンは自由と若者のエネルギーの象徴でした。21世紀、同じ道路の上で行き場のないエネルギーを輝かせる若者は、ハーレーではなくロードバイクのサドルにまたがっている、またはジョギングシューズを履いているのではないでしょうか。
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大熊座から来た男

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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