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都市と確率論―コルタサル『石蹴り遊び』、京都、n次元酔歩問題

 「パリを彷徨え、わたしの愛」 これはアルゼンチンの現代作家、フリオ・コルタサルの小説『石蹴り遊び』(1963)の帯に書かれている言葉です。主人公の作家志望の青年と私生児を抱えた娼婦は、待ち合わせもせず偶然の出会いを期待してパリの街を彷徨い、逢瀬を繰り返します。まるでパリの街をゲーム板、自らをその上の駒として偶然が作る物語を楽しんでいるかのような遊戯性がその中には見られます(物語自体は、むしろ痛切なものなのですが)。そして、この小説の構造もまた極めて独創的、遊戯的なものです。物語は155章の細かい断片に分けられ、それを1章から順に読んでいくほかに、作者によって指定された順で読んでいく方法があり、この場合また違った物語が現れてきます。この読み方は、読者自身が無数の断片を組み合わせて、まったく新しい物語を作る可能性をも示唆しています。

 この「放浪」や、「組み合わせ」といったモチーフは、パリの街の形状と関係があるのではないでしょうか。パリはセーヌ川の中州、シテ島を中心に同心円に近い形状で行政区が分けられ、時計回りに番号がついています。道路は数多くの広場から放射状にまっすぐ伸び、幾何学的かつ複雑な模様を作っています。パリに行ったことはありませんが、このような人工的な都市の形状は、そこに住む人の精神に何らかの影響を及ぼすのではないでしょうか。僕は幾何学的な美しさを持つ地図を見ると、あるルールを作ってそれに従ってさすらいたい衝動に駆られます。

 都市の形状は大きく放射型と碁盤型に分類できるそうですが、数学的には放射型が極座標、碁盤型が直交座標(またはデカルト座標)となります。すべての道路が直交し、放射型よりさらに人工的な印象を受ける碁盤型の都市の代表にニューヨークがありますが、ポール・オースターの『シティ・オブ・グラス』(1985)では尾行している男の移動経路をマンハッタンの地図の上に描いたらアルファベットが現れるというエピソードがあります。このような遊びを考えたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

 そして日本における碁盤型都市の代表は京都です。京都に来て間もない時のことでした。数学の確率論の授業で酔歩問題(ランダムにn次元空間の中を移動するものの軌跡や、出発点からの距離の期待値等を計算する)を学んでいた僕は、実際に京都の街でそれを確かめたいと思いました。ある日京都市中心部で、交差点に差し掛かるとこっそり小さなさいころを振って1,2なら左折、3、4なら直進、5,6なら右折というルールを決めて歩いてみたことがあります(後退はさすがに怪しまれるのでやめました)。酔歩問題では1,2次元なら必ず出発地にいつかは帰ることができるので(3次元だと、帰れる確率は約34%になります)、どのぐらいの時間で戻れるか試してみたかったのです。

 結果は…。数時間さまよった後、結局どこにいるかわからなくなり(地図を持ってきていませんでした)、タクシーで変える羽目になりました。それでも、その過程で面白そうな店や場所をいくつか見つけ、京都の本当の顔を少し垣間見たような気がしました。京都が僕にとって一種の祝祭空間であるのは、こういった遊戯性を引き出すものを都市の構造が内包しているためかもしれません。

 京都、碁盤の目、遊戯と聞いて、約30年前の名作ゲーム「平安京エイリアン」を思い出したオサーンは正直に挙手(゚д゚)ノ。
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No title

はい。挙手。挙手。

センセー!先生、男子がガイドさんの言うことを聞きません! センセー!、女子が買い物に行ったまま帰ってきません (違うって)

途中まではえらく、格好の良い話だったのに
懐かしい『シティ・オブ・グラス』まで登場して

祝祭空間・遊戯性という魅力的なタームを使いながら
肝心の地図をもってないなんて・・・

ある意味、大熊(略)さんらしい(笑)
エピソードではありましたが

(これは人生に地図がないとかいう暗喩じゃないよね?)

それでは!!

No title

>(これは人生に地図がないとかいう暗喩じゃないよね?)

そうか、それは気付かなかった。実は、単に持っていくはずだったのに、家に忘れただけです。京都来て間もないころだったので、バスの経路がわからずタクシー使う羽目になりました。
プロフィール

大熊座から来た男

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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