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漫画 『Boich 作品集 HOTEL』

Boichi 作品集 HOTEL (モーニングKC)Boichi 作品集 HOTEL (モーニングKC)
(2008/10/23)
Boichi

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 2006年の初夏、英文科の大学院生だった僕は、夕食を食べようと下宿の近くのカレー屋に入りました。カレーができるまでの間、置いてあった雑誌から時々読んでいた週刊モーニングを手に取ると、聞いたことのない作家の読み切りが目に留まりました。たった数ページで圧倒的な画力と緻密な科学的考証で引き込まれ、運ばれてきたカレーにも手を付けず読み終わった後しばし呆然としていたのを覚えています。後に作者が物理学を専攻した後に大学院では映画を専攻という、僕と似ている経歴だったことがわかり、妙に納得しました。それが、『Boichi 作品集 HOTEL』(Boichi 2008年、講談社)の表題作「HOTEL -SINCE A.D. 2079」(p.3~44)です。

 近未来、温室効果の暴走により地球が金星のような超高温の惑星になることが確定した時、2つの計画が実行されます。一つは何光年もかなたの人類が生存できるかもしれない恒星系に、人類のDNAと文明の記憶を運ぶ宇宙船「方舟」を作ること。もう一つは若手研究者の提案によるもので、南極に人間以外の生物種のDNAを保存する巨大な塔、のちに「ホテル」と呼ばれるものを建設すること。以下せりふより引用。

「地球環境が回復する可能性はなく 貯蔵されたDNAが発現する可能性もありません」「塔の目的はただ……」
「『責任』を負うことです 人類が犯した罪の責任を…… ということです……」(『HOTEL』 p.8~9)引用ここまで。

 「ホテル」は完成し、その管理は人工知能「ルイ」に任せられます。「方舟」は14万人のDNAを搭載して旅立ち、気温の上昇による海面上昇は、地上のほとんどの生命を飲み込み(ルイ・アームストロングのWhat a Wonderful Worldが鎮魂のように流れる中、水没していく世界を描く数ページは圧巻)、その後海洋の蒸発により生命が存在しない永遠の荒野が訪れます。何万年もの間自己修復を繰り返し、DNAを守り続けてきた「ルイ」が最後に出会ったのは?この先は自分で確かめてください。

 生命のいない地球の静寂のことを考えると、言いようのない苦しさに胸が締め付けられます。地球が金星化するほどの暴走温室効果は可能性が少ないとされていますが、例えば北極圏についてはそのポジティブ・フィードバックと言われる悪循環がすでに起こっていると主張する研究者もいます(また別の記事で書きます)。すべての生物が死を免れないのと同様に、おそらく人間という種やその生み出した文明も永遠ではありません。しかしそれを終わらせるのが僕たちの世代であることは許されないはずです。
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大熊座から来た男

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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