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気候工学とコスト

 気候変動の抑制にはコストの問題が深くかかわっていますが、気候工学にも同じことが言えます。気候工学とコスト(経済的コストと、人的、物質的コストの両方を含む)の関係において、大きく問題となるのは、それが高すぎる場合と、安すぎる場合の両極端です。これには多くの人が疑問を抱くでしょう。高すぎる、は理解できるが、なぜ安すぎることが問題となるのでしょうか?

 その前に、強制放射力(W/m^2)という数値のことについて説明します。これは、単位面積当たりどのぐらいの放射エネルギー(太陽光や、地表面での反射)が地球に出入りしているかを表している量で、プラスの場合は入射するエネルギーが大きい(温度が上昇する)、マイナスの場合は放出されるエネルギーが多い(温度が下降する)となります。現在は約1.7W/m^2であり、気温は上昇傾向にあります。

 まず、コストが高すぎる場合を考えます。気候工学はSRM(太陽放射管理)とCDR(二酸化炭素除去)の二つに分類されることは述べましたが、そのうちのいくつかの技術は天文学的なコストを必要とします。(これより『気候工学入門』(杉山昌広, 2011年)のデータを引用しています)まずSRMの場合、例えば宇宙太陽光シールドという宇宙空間に太陽光を反射するシールドを打ち上げ、それで地表に達する太陽光を弱める方法があります。しかしこのSF的ともいえる方法は、放射強制力を1W/m^2下げるのに年間約5000億円の費用がかかるうえに、何万回ものロケットの打ち上げが必要とされます(p.62, p.106 表7-3)。CDRでも、直接空気から二酸化炭素を回収する技術を用いると、人によって評価は分かれますが、Keith et al. (2006)の論文では、1tの二酸化炭素の回収に136$もの費用が掛かります(p. 109 表 7-4)。

 ではコストが低くて問題となるのはどのようなケースでしょうか?たとえば、SRMの中で最もポピュラーな技術の一つに、成層圏エアロゾル注入と呼ばれる、航空機で硫黄酸化物(SOx、大気汚染物質でもある)を散布する方法があります。この方法のコストは、1W/m^2下げるのに年間200億円(p.106 表7-3)と、F-15戦闘機約2機分の価格です。また、CDRでは、最も安価な技術として鉄散布による海洋肥沃化(海に鉄を散布することでプランクトンの光合成を促し、二酸化炭素を吸収する)がありますが、これはある見積もりでは二酸化炭素1tあたり0.1~15$で可能であり(p.108 表7-4)、すでにいくつかの民間企業が実験的にそれを行っています(p.90 表6-2)。一企業や一個人が地球の気候に干渉できる技術を持つことが、どのような危険をもたらす可能性があるか想像に難くありません。

 このように気候工学に関しては、ある種の技術はコストが高すぎる点で、差し迫っている気候変動の危機に対して現実味を欠き、また別の種の技術は安価で手軽であるがゆえに、その影響が不確かな段階で、気候変動の状況に焦りを感じた団体や個人などによって実行される可能性があります。気候工学においては、ある対策を実行した場合としない場合のそれぞれのリスクを天秤にかけ、冷静な判断を下すことが重要になるでしょう。

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大熊座から来た男

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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