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成層圏エアロゾル導入と気候変動のリスクに関する論文

 気候工学に反対する人の多くは、それがどのようなリスクをもたらすのかが不明であることをその理由とします。ですが、そのリスクの大きさについて、どのぐらいになるのかを調べてその結果反対している人が何人いるでしょうか?きちんと調べずにただ反対というだけでは、単なる非科学的な印象による意見にほかなりません。この気候工学導入のリスクと、気候変動がもたらすリスクについて、DICE (Dynamic Integrated model of Climate and the Economy) と呼ばれる経済と気候に関する統合的モデルを用いたシミュレーションの論文が興味深かったので、その要点について。Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol.33, No. 2に掲載された「地球温暖化の不確実性と気候工学の役割」という論文で、著者の一人は『気候工学入門』の杉山昌弘博士です。

 この論文では、経済を新古典派の最適成長モデルに従うとして、危険な気候変動である+2℃を回避するためSRM(成層圏エアロゾル)を導入した場合の効果とリスク、二酸化炭素削減のための費用などをシミュレーションしています。この論文で興味深かったのは、SRMがもたらすダメージを直接計算するのではなく、それが二酸化炭素による気温上昇が3℃になったときのダメージの何倍に相当するかをパラメーターとして、それを0(副作用が全くない)から100(副作用が3℃上昇のダメージの100倍)までのいくつかに変化させて、それぞれについてモデルでSRMが導入されるかについてシミュレーションしている点です。

 SRMのダメージが全くない場合では当然導入され、大きく放射強制力を低下させますが、SRMと3℃のダメージが同等や、SRMのダメージが10倍の場合でも大きな規模で導入されています。100倍だとほんのわずかしか導入されませんが、気温3℃上昇のダメージの100倍はさすがに非現実的な数値ですので、これは無視して良いでしょう。論文では「成層圏への硫黄注入の副作用が、CO2によるダメージの10倍に達する状況は考えにくい」(p.23)とあるので、10倍すら大きすぎる見積もりかもしれません。

 この結果を考えると、気候変動がもたらす経済的ダメージと比較すると、圧倒的な低コストで大きな効果をもたらすSRMの導入は十分に合理的と思われます。あともう一つ興味深い指摘として「SRMの必要な量はにこう選択ではなく、SRMの導入は量的な問題である」(p.23) とありました。最近のエネルギー問題などから見てもわかるように、こういった新技術に対しては短絡的に「0か1か」、つまり全面禁止か導入か、といった考え方をする人が多くいます。このブログでも何度も繰り返しているように、気候変動やエネルギーの問題は様々な対応策のメリットとデメリットを定量的に判断し、最適の組み合わせを探ることが重要です。二酸化炭素削減とSRMは両立します。このような研究がもっと進んで、より具体的なデータでSRMのメリット、デメリットが示されれば、気候変動対策は大きく前進するでしょう。

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興味深いですね

素人なのでよくわかりませんが、喩えていえば、経済が肥大化すれば、人間が肥満になって健康が損なわれるように、地球も不健康になって、人類に悪影響を及ぼす様々な弊害が生じるということなんでしょうかね。

そして病気が進まないようにするためには、食事制限や医学的処置などが必要になるように、例えば二酸化炭素を削減するなど対応をしなければならなくなる。

しかし、やりすぎは、経済に深刻なダメージを及ぼす可能性があるので、最適なバランスの対応を知るための工学というのが、今回紹介された論文ということでしょうか。

治療と同じで、正しく診断するだけでなく、治療後のリスクも考えて最適な治療計画が立てられてこそ、安心して病院にかかれるのと同じで、とても有意義な研究だと思いました。

No title

 気候工学は、経済の話はあまり関係なく、直接的に地球の温度を下げる技術です。「気候工学」のカテゴリーに書いてあるので、そちらをお読みください。

 二酸化炭素削減よりも、リスクがある他の手段を用いたほうが、経済的損失も小さくなるという内容です。
プロフィール

大熊座から来た男

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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