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原体験と想像力:アランセーターから考える成熟した消費

 原体験という言葉があります。主に幼少期~青年期に体験したことで、その人の思想や趣味、嗜好に大きな影響を与えた体験のことです。例えばミュージシャンのインタビューなどで、「小学生の時にラジオから流れてきたビートルズを聞いて~」というようなやつです。大体大人になってから本や映画などに確固たる判断基準を持っている人は、遅くとも中学生までにこのような原体験に相当するものがあるように思えます。

 洋服に関しても同じようなことが言えると思います。大人になってお金の余裕ができてから洋服に興味を持った人の場合は、原体験に根差した判断基準を持たずに、時流のスタイルに流されてお仕着せの格好になりがちです。それに対して10代のお金のない時期から、古着屋やワーク、ミリタリーものなどを活用して少しでもかっこいいスタイルをお金をかけずに実践した人は、たとえ同じようなものを着ていても、その中にリアリティーを感じます。

 僕にとっての洋服の原体験とは、中学2年の時に母親に連れて行ってもらったデパートの英国物産展で買ってもらった、クルーネックのアランセーター(ケーブル編みの手編みのセーター)でしょうか。母親は自分が編み物をしていたので、おそらく編み方の勉強もかねて買ってくれたのでしょうが、手編みの本場のイギリス(おそらくスコットランドかアイルランドのものだったと思います)のモスグリーンのニットは、ゲームしか興味のない田舎の男子中学生から見ても他の洋服とはっきりと違う本物の風格を持っていました。それを作った人の技術と労力が一目でわかるような素晴らしいものでした。

 このセーターは中学時代は学生服の下に、高校に入ってからは米海軍のピーコートの下にと冬になると愛用していました。だから予備校時代の冬に、実家から送ってもらった時に母親が保管に手を抜いて虫食いができていたときは、本当に腹が立ちました。ただお金がもったいないだけでなく、これほど丁寧に作られたものの価値を減じてしまうことが製作者にとっての裏切りのようにも思えたからです。

 本や映画などに限らず、洋服に関しても僕は幸福な原体験をすることができたと思います。今の時代、このように製作者の苦労にまで想像力が及ぶ洋服がどのぐらいあるでしょうか。たいていの洋服が中国などの工場で作られる大量生産品になってしまった時代、それらを見て生産者のことを想像し大切にするというのは、マクドナルドのハンバーガーを食べて食べ物の大切さを学ぶことと同じぐらい困難なことかもしれません。ですがこれから資源、エネルギーを大幅に削減しつつ経済を失速させないという困難な課題に取り組まなければならない時代、少しでもいいから本物の洋服に触れ、技術やデザインという物質でないものにお金を払う価値観を形成するということは、重要性を増しているように思えます。

スコットランド、Inverallanのアランセーター。一着編むのに90時間ほどかかり、製作者の署名が紙タグに入ります。真冬は風を通すので、キルティングや薄手のダウンのヴェストを挟むといいでしょう。

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病院食と開高丼:『孤独のグルメ』、『地球はグラスのふちを回る』

病院の朝食。おかゆ嫌い。

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 胃の出血の可能性があったため、検査のために数日間入院していました。特に大したことはなかったみたいで今日退院しました。胃カメラの検査のため、2日間絶食していたのですが、そこで思い出したのは僕の人生のバイブル、『孤独のグルメ』の特別編、入院食の回。中年男の主人公が定食屋などで食事するだけのこの漫画の中で、肋骨の骨折のために入院したときの食事について描かれている異例の回です。

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 食欲旺盛な主人公は、隣のベッドで看護師に食事を柔らかくつぶしてもらった老人がそれを弱弱しくすすっているのを見て、「それでもひとり食べるんだな」「生きているということは体にものを入れてくということなんだな」と思います。

 物理的に考えれば、身長170cmちょっと、体重少し落ちて52kgほどの僕は、一日に約2000kcalを消費する熱効率40%ほどの熱機関となります。それを維持していくのに、必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルを含む同じだけのエネルギーを持つ食物と2リットルほどの水が必要とされます。生命の維持とは、結局のところこの物質の循環です。

 そして食物とは、同じような循環によって維持されてきた他の生命です。人間は食物連鎖の頂点に立つ生物として、捕食される危機を感じることなしに、他の生命を体に取り込むことで生命を維持しています。そして食事は単なる生命活動維持の義務ではなく、自分が生き延びるために他の生命を奪い、それを取り込むというエゴイスティックな行為に快楽を覚えることでもあります。食べる行為は、生と死が交錯する場に他なりません。

 このような人間の業と快楽を徹底して追求した先人の一人に、作家の開高健がいます。記者としてベトナム戦争に従軍し、ゲリラの攻撃を受け200人中17人しか残らなかったという文字通りの九死に一生の体験をした後、彼は父親の故郷である福井県の旅館に宿泊します。冬の福井の味覚と言えば越前カニですが、そこで焼きカニやカニ刺しなどで一通りその美味を堪能した後、主人が出した二合のご飯の上に、越前ガニのメスであるセイコガニの身や卵巣などを八杯分乗せた丼の味に感激し、それ以来このシンプルかつ豪快な丼は開高丼と呼ばれる旅館の人気メニューとなりました。

 開高健の食にまつわるエッセイの最高傑作、「越前ガニ」からこのセイコガニについて描かれたところを引用してみます。擬音語や形容詞で畳みかけるような独特の描写が特徴的です。また彦麿呂の決め台詞の元ネタでもあります。


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「雄のカニは足を食べるが、雌の方は甲羅の中身を食べる。それはさながら海の宝石箱である。丹念にほぐしていくと、赤くてモチモチしたのや、白くてベロベロしたのや、暗赤色の卵や、緑色の“味噌”や、なおあれがあり、なおこれがある。これをどんぶり鉢でやってごらんなさい。モチモチやベロベロをひとくちやるたびに辛口をひとくちやるのである。脆美、鮮鋭、豊満、精緻」(『地球はグラスのふちを回る』新潮文庫 p.96)

 生と死が交錯する戦場の激烈な体験の後、80年代に入ってからは開高健は小説家というよりむしろ美食や釣りに関するエッセイストとして活躍します。この美食という行為も、やはり業を背負った人間のエゴを極限まで追求する戦場のようなものだったのではないでしょうか。僕もこれからもおいしいものをいっぱい食べていきたいのですが、その行為に見合うための義務、つまりその生命を生み出す生態系を保持するという仕事を全うしたいと思います。今週末には、開高丼食べてきます。

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最少の買い足しで'13A/W最旬スタイルを

 僕の住んでいる地域では、明日から3日ほど気温が12℃前後になり、雪が降る可能性も出てきました。いよいよ冬もののアウターが活躍する時期です。今季の最注目は、フォーマル用コートとされるチェスターフィールドコートですが、どのようなものをどのように着ればいいのでしょうか。

 その前に、少しメンズのトレンドの特色について書いておきます。毎シーズン変化するレディースとは違い、メンズのトレンドの中心は定番のものとなります。つまり基本は「今季はどの定番が流行るか」であり、それを理解しておけば毎シーズン買い足すことなしに、今季らしいスタイルを作ることができます。しかし定番といえどもシルエットや素材等の緩やかな変化(5~10年ぐらいで変わる)があるので、そのぐらいの周期で買い換える必要はあります。今季ではチェスターフィールドコート、スウェットシャツ、タートルネック、大柄チェックなどがこの範疇に入ります。

 それに対して、本来の意味でのトレンド、つまり毎シーズンごとの一過性の流行というものもあります。今季ではバイカラー(シャツやニットなどで用いられる2色の切り替え)や、カラーパンツなどです。これらは次のシーズンに流行遅れになっている可能性が高いので、あまり多く買う必要もなく、また安いもので構いません。

この2つの種類のトレンドを盛り込んだ、カジュアルのチェスターフィールドコートのスタイル例。

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 メインのチェスターフィールドコートは、Super Thanksという新鋭ブランドのもの。デザインとクオリティーの割にはリーズナブルで、雑誌にもよく取り上げられています(しかもこれは新品未使用の新古品。かなり安かった)。チェスターフィールドはビジネス、カジュアル兼用と言われますが、カジュアルに着るにはそれ専用のものがいいと思います。このタイプはジャケットを伸ばしたようなテーラード型なので、サイズ感がシビアです。よってジャケットの上に着れるサイズの物をニット等の上に着ると、少し大きいだけでぶかぶかの印象を受けます。また仕事着を休日に着ているような感じを避けるため、カジュアルな要素(このコートの場合、大柄チェックとパッチポケット)があるものがいいでしょう。

 インナーのニットは赤とベージュのバイカラータートル。これも.efilevolと言う国内新鋭ブランドのものですが、アクリル主体の素材なのでそのブランドにしては格安でした。パンツはウール混の細身のスウェットパンツ。チェスターフィールドに合わせるパンツはタイトなものでないと、裾がもたつきます。よくデニムを合わせている人がいますが、ドレスダウンというよりただ手を抜いているように見えることが多いです。

 結局、本当に今年らしいものと言えばバイカラーのタートルだけですが、十分に2013年秋冬を意識したスタイルとなっていると思います。今季のアウターを迷っている人は、とりあえずチェスターフィールドコートを探してみましょう。これなんか、リーズナブルで高品質でお勧めです。


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'13 11/4 近況など

 体調は相変わらずですが、少し疲れやすく連休は大部分は家でぐったりしていました。近くで開催されていた岡倉天心展に行ったのですが、美術館に併設された喫茶店がオープンしていました。夏のミケランジェロ展のときは期間限定だったのですが、近所に喫茶店がないところに住んでいたので助かります。そこの近くには図書館もあるので、あと古本屋さえあれば完璧なのですが。

 気候工学を研究されている先生にお聞きしたところ、僕の研究のテーマは日本よりも外国の学会で受け入れられるようなので、来年の夏にアメリカで開催される環境系の国際学会を目標に準備を始めようと思います。もし発表できるなら、体調と航空温室効果ガスを理由にまたオンラインで発表させてもらえないか頼んでみます。

 9月の学会に続いて、母校の学会でも航空温室効果ガスについてのアンケートを配布してもらいました。僕は行けなかったので、後輩に頼んであります。その結果は大学の環境対策に大きな影響力を持つNPOに参考資料として提出する予定です。

 たまに行っているバーでよく自転車レースの映像を流しているのですが、最近までその面白さがわかりませんでした。しかし近藤史恵の小説『サクリファイス』を読んで、ただ早く走ればいいのではなく、チームとしての戦略や、チームのエースを勝たせるために風よけになったり、相手のチームをけん制したりするアシストと言われる選手のことを知り、興味が出てきました。この作品は自転車小説、青春小説そして推理小説が絶妙にまじりあっていてお勧めです。続編の『エデン』はツール・ド・フランスを舞台にしていて、これも読んでみる予定です。


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これもついでに (ホラー注意)。


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プロフィール

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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