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中国の大気汚染と人工降雨

 長いスパンで広範囲の領域の気候に影響を与える気候工学に対して、人工降雨など短期間、局地的な気象に介入する気象工学は低コストで要求される技術レベルも低いため、割と古くから世界中で実施されてきました。特に中国では、人工降雨は干ばつの対策や北京オリンピックの時は開会式の天気を快晴にするため、国がバックアップしてきました。そして最近、人工降雨の新たな利用法を政府が推進して話題となっています。

 ご存じのとおり中国の大気汚染による住民の呼吸器疾患は深刻で、その死者数は少なくとも毎年100万人という報告もあります。 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1219&f=national_1219_001.shtml この対策に頭を悩ませている政府は、「有害濃霧を人工降雨により軽減」するための気象コントロールを各地の気象部門に認めました。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131218-00000017-xinhua-cn 僕はこの計画が今後どのような経緯をたどるかに注目しています。

 有害物質は気体より液体、液体より固体と濃縮したほうが扱いやすく、被害も少なくなります。その点からは、大気中の二酸化硫黄などを雨に溶かしてしまうことは、合理的な大気汚染軽減の方法と言えます。またヨウ化銀を用いる人工降雨も中国政府には十分なノウハウがあると思われるので、成功の確率は高いでしょう。しかしこれを実施するには以下の点について留意する必要があります。

・汚染物質が溶け込んだ降雨による土壌の汚染はどの程度になるか。
・人工降雨と工場の排気ガスのクリーン化を比較した場合、コストの上で見合っているか。
・人工降雨を実施した場合、周囲の気象に対する影響はどの程度になるか。

 この3点に関して問題がなければ、積極的に人工降雨を実施するべきだと僕は思います。例えば実施により大気汚染による死者数の10パーセントを低減できた場合、それは年間10万人にもおよびます。これだけの生命を救えるなら、例えば異常気象による局地的な農業生産の低下などのデメリットは国が補償することを前提として、実行するべきでしょう。

 どのような気候やエネルギーに対する政策にもメリットとデメリットのどちらも必ず存在します。大切なのは、総合的に判断して現状考えられるうえでの最適な選択を行うことです。

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IPCCと気候工学 

 (昨日シスプラチンの化学療法2クール目2回目が終了して、あと10日ほどTS-1を服用すれば2週間の休薬期間になります。副作用は強くないとはいえ、シスプラチン点滴後の1~2日はやはりすこし気分が悪く、まだ本格的にブログの更新をできないので、不十分な内容です。あとで追記します)

 9月26日に6年ぶりに公表されたIPCC (International Panel of Climate Change)第1作業部会第5次報告書では、人間活動が気候変動の原因である確率が95%以上であること、今世紀末までの気温上昇最大+4.8℃(これは世界全域での平均で、赤道付近ではほぼ上昇しないのに対して中緯度付近などではこれよりはるかに大きくなる)というデータで衝撃を与えました。

 このIPCCで、ロシアが気候安定化の技術として、気候工学をあげるべしと主張しているというニュースがイギリスGuardianに出ていると http://www.theguardian.com/environment/2013/sep/19/russia-un-climate-report-geoengineering、気候工学関連の情報を発信している「ジオエンジニアリング・ネット・フォーラム」http://geoeng.brs.nihon-u.ac.jp/index.html にありました。

 IPCCの報告書は今後来年の10月ぐらいまで続きますが、その中で気候工学について取り上げられるようになることは大いに考えられます。各国政府の気候変動対策に大きな影響力を持つ組織なので、気候工学に関する論争が世界的に活発化しそうです。

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成層圏エアロゾル導入と気候変動のリスクに関する論文

 気候工学に反対する人の多くは、それがどのようなリスクをもたらすのかが不明であることをその理由とします。ですが、そのリスクの大きさについて、どのぐらいになるのかを調べてその結果反対している人が何人いるでしょうか?きちんと調べずにただ反対というだけでは、単なる非科学的な印象による意見にほかなりません。この気候工学導入のリスクと、気候変動がもたらすリスクについて、DICE (Dynamic Integrated model of Climate and the Economy) と呼ばれる経済と気候に関する統合的モデルを用いたシミュレーションの論文が興味深かったので、その要点について。Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol.33, No. 2に掲載された「地球温暖化の不確実性と気候工学の役割」という論文で、著者の一人は『気候工学入門』の杉山昌弘博士です。

 この論文では、経済を新古典派の最適成長モデルに従うとして、危険な気候変動である+2℃を回避するためSRM(成層圏エアロゾル)を導入した場合の効果とリスク、二酸化炭素削減のための費用などをシミュレーションしています。この論文で興味深かったのは、SRMがもたらすダメージを直接計算するのではなく、それが二酸化炭素による気温上昇が3℃になったときのダメージの何倍に相当するかをパラメーターとして、それを0(副作用が全くない)から100(副作用が3℃上昇のダメージの100倍)までのいくつかに変化させて、それぞれについてモデルでSRMが導入されるかについてシミュレーションしている点です。

 SRMのダメージが全くない場合では当然導入され、大きく放射強制力を低下させますが、SRMと3℃のダメージが同等や、SRMのダメージが10倍の場合でも大きな規模で導入されています。100倍だとほんのわずかしか導入されませんが、気温3℃上昇のダメージの100倍はさすがに非現実的な数値ですので、これは無視して良いでしょう。論文では「成層圏への硫黄注入の副作用が、CO2によるダメージの10倍に達する状況は考えにくい」(p.23)とあるので、10倍すら大きすぎる見積もりかもしれません。

 この結果を考えると、気候変動がもたらす経済的ダメージと比較すると、圧倒的な低コストで大きな効果をもたらすSRMの導入は十分に合理的と思われます。あともう一つ興味深い指摘として「SRMの必要な量はにこう選択ではなく、SRMの導入は量的な問題である」(p.23) とありました。最近のエネルギー問題などから見てもわかるように、こういった新技術に対しては短絡的に「0か1か」、つまり全面禁止か導入か、といった考え方をする人が多くいます。このブログでも何度も繰り返しているように、気候変動やエネルギーの問題は様々な対応策のメリットとデメリットを定量的に判断し、最適の組み合わせを探ることが重要です。二酸化炭素削減とSRMは両立します。このような研究がもっと進んで、より具体的なデータでSRMのメリット、デメリットが示されれば、気候変動対策は大きく前進するでしょう。

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今後の研究の展望

 先日学会発表が終わり、いくつか指摘、質問をいただいたので、それも参考に今後どのような方向に研究を発展しようか考えています。日本文学における気候、気象操作とキリスト教や仏教、アニミズムなどの自然観の関係について論じたのですが、やはり取り上げた作品に年代的な偏りが大きかったという問題があります。気候工学自体がマイナーな分野であり、それを扱った文学作品というとさらに少数になるのがその理由です。今後は日本に限らず他国の作品、また映画やアニメ、ゲーム等も分析の対象にすることを考えています(ていうか、むしろこっちの方が好きなのですが)。

 例えばジェイムズ・ラブロックのガイア仮説を基に作られたSim Earthという地球の生態系や文明を発展させていくゲームがありますが、プレイヤーは神の視点から天地創造や進化を支配することになり、このようなゲームはやはりキリスト教圏ならではのものだと思います。またディズニーシーにはストームライダーという台風制御のアトラクションがありますが、欧米ではこのようなエンターテインメントを通じて、人間が自然を制御するという価値観が浸透しているように思います。このようなものが気候工学に関する世論の形成に与える影響なども考察したいです。

 また発表した内容を修正して論文にする予定ですが、どこに投稿するのかもいろいろ考えています。発表した学会に投稿するのが一般的ですが、やはり海外の気候工学研究に関する論文の募集に応募したほうがより専門的にこの問題に取り組んでいる人に読んでもらえるでしょう。例えばIASS (Institute for Advanced Sustainability Studies)という学会が6月にドイツで、気候工学と宗教、精神的見解に関するワークショップを行っているので、そのようなテーマの論文の募集を探しています。

 あと気候工学、特にSRMの硫酸エアロゾル散布についての理解を深めるため、専門書や論文をいくつか読む予定です。できることなら大学の授業や研究室に潜り込んで本格的に勉強したいのですが、僕の勤める大学では地球物理や気候科学の講座はないため、独学となりますががんばります。

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ビル・ゲイツと気候工学

 マイクロソフト会長で世界有数の大富豪であるビル・ゲイツは、現在途上国の病気や貧困問題の解決のためのビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の活動に主に携わっていますが、彼が気候工学の支持者であることはあまり知られていません。Gurdian紙の記事によると、http://www.guardian.co.uk/environment/2010/may/14/bill-gates-cloud-whitening-dangerous  彼はcloud whitening (雲の増白)と呼ばれる技術の研究のため$300,000の資金をSilver Liningというアメリカに本拠を置く団体に寄付し、実験を後押ししています。

 また最近NHKでも放送されている多くの世界的著名人も出演しているプレゼンテーション、TED (Technology Entertainment Design) で2010年にエネルギー問題についての講演をしていますが、その中で全く新しいタイプの原子炉などの解決策とともに、24分ごろから気候工学の「20年か30年の時間的猶予」を与えてくれる「保険」としての役割について語っています http://www.ted.com/talks/bill_gates.html 。さすがにIT界の巨人、わかりやすくユーモアに富んだプレゼンテーションは一流で、英語も聞きやすいのでぜひ観てください(字幕付き)。

 ゲイツの気候工学への支援に対して批判的な意見も多いですが、実際に実施するかは置いても将来の気候変動対策における一つの選択肢として気候工学の研究は不可欠と思えます。そのリスクについて心配する人も多いですが、これを行わない場合に生じる可能性がある被害(人的、経済的、生態学的)を可能な限り定量的に評価し、それと比較しないと意味がありません。十分な知識もなしに新しい技術を批判することは、思考停止にほかなりません。

 またゲイツと並ぶもう一人の巨人、アップルの故スティーブ・ジョブズ(僕の病気はジョブズが患っていた膵内分泌腫瘍とよく似ています)がスタンフォード大の卒業式で行った有名なスピーチで引用した “Stay hungry. Stay foolish” という言葉は、彼が愛読したアメリカの作家、環境活動家スチュワート・ブランドが1968年に創刊したWhole Earth Catalogue という雑誌から取られています。そしてブランドはWhole Earth Discipline (『地球の論点--現実的な環境主義者のマニフェスト』)という本で気候工学の推進を主張しています(残念ながらまだ未読)。ジョブズは気候工学についてどのような意見を持っていたのでしょうか。


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プロフィール

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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