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『地球の論点-現実的な環境主義者のマニフェスト』を読んで


地球の論点 ―― 現実的な環境主義者のマニフェスト地球の論点 ―― 現実的な環境主義者のマニフェスト
(2011/06/15)
スチュアート ブランド

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 スティーブ・ジョブズが講演で引用した言葉、”Stay hungry, Stay Foolish”が書かれていた伝説の雑誌Whole Earth Catalogの編集者スチュワート・ブランドの『地球の論点-現実的な環境主義者のマニフェスト』(原題Whole Earth Discipline)の気候、エネルギー、気候工学に関する章を読んだので、それについて。

 Whole Earth Catalogは60~70年代にヒッピーたちのバイブルであり、ブランドもまた産業やテクノロジーに反発する自然志向の環境保護論者でした。しかしこの本で気候変動への対抗策として挙げられているのは、都市化、遺伝子組み換え、原子力、気候工学など一般の環境保護論者がこぞって反対しているものだらけです。しかし彼は差し迫る気候変動のもたらす影響を前に、これらのテクノロジーの利点と問題点を厳正に天秤にかけてこれらを推進するべしと結論します。

 エネルギーを例にとってみましょう。今多くの(特に日本の)環境保護論者の意見では、原子力から再生可能エネルギーへ移行すべきだという点で一致しているでしょう。『地球の論点』p.23~25のデータによると、今世界で使われている電力は約16テラワット。大気中の二酸化炭素濃度を気温上昇がティッピング・ポイントを超えない450ppmまでに抑えるためには、風力、太陽電池、太陽熱、地熱、バイオ燃料それぞれ2テラワットづつ2×5=10テラワット、原子力で3テラワットで合計13テラワットを非化石燃料で賄う必要があります。そのためには例えば「15%の利用効率を持った一〇〇平方メートルの太陽電池パネルを、毎秒一台、二五年間、休まずに作り続けなければならない」(p.24)など、莫大な規模のインフラを、短期間で作り上げなければなりません。そして13テラワットの発電に必要な面積はアメリカ1つ分です。原子炉はほかの設備と比較してごくわずかな場所しかとらないので無視すると、もし16テラワットの電力をすべて再生可能エネルギーで賄うなら、アメリカ1.6個分の土地を手放さなくてはなりません。

 また原子力に関しても、その実情を視察、研究してから、かつて原子力に反対していたことを愚かだったと認め、現在は推進を主張しています。その理由として石炭火力発電の莫大な温室効果ガス、火力や再生可能エネルギーのフットプリント(景観上に残す足跡。これらは広大な面積を必要とする)、放射能の影響の過大評価、第四世代原子炉の開発などを挙げています。特にトリウム溶融塩炉を高く評価していて、ある論文を引用しそのメリットは「従来のように地中深い場所で稼働させる必要はなくなるし、濃縮過程も不要になるし、使用済み燃料の処理も不必要、再利用や廃棄物の貯留施設も不要だ。原子炉自身が、堅牢な埋葬容器になるのだから」(p.163~64)と書いています。

 最終章では著者はノーベル化学賞受賞者で気候工学の推進者であるポール・クルッツェンの提唱する現在の地質年代(白亜紀とかジュラ紀みたいなもの)「アンスロポシーン(Anthropocene, 人類世)」を引用し、人間が大気や生態系に消えることのない変化をもたらした時代において、それを修復するための気候工学などの手段について論じています。そしてグリーン派がかつての共産主義者のように時代遅れになり忘れ去られないために、グリーンに科学とテクノロジーのブルーを混ぜた、ターコイズ派の活躍を期待しています。最後に印象的な結びの言葉を。

「エコロジーのバランスはきわめて大切だ。センチメンタルな感情で語るべきものではなく、科学の力を借りなければならない。自然というインフラの状況は、これまで成り行きに任されっぱなしだった。これからは、エンジニアの力を借りて、修復していかなければならない」(p.435)

 理路整然としていて、まさに「現実的な環境主義者」が大きなヴィジョンに基づいて書いた、人間、産業も含めた地球の生態系の包括的なデザインといえる本でした。テクノロジーによる世界変革を夢見たかつてのヒッピー、ジョブズが心酔した人物の入魂の力作です。

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+3℃の炭素収支: FoW 3 Degreesをプレイして

 環境政策ゲームFate of the Worldの最も現実に即したシナリオ、3 Degreesがクリアできません。成功したプレイ動画を観てみても、大量のエアロゾル散布で強制的に気温を下げているものぐらいしかなく、それ以外では生物兵器で人口を減らさないと3℃以下は達成不可能という意見もネット上でみられます。

プレイ動画。これをアップロードした人は、一回失敗しています。


 
 このシナリオ以外でも、勝利条件が気温上昇を3℃以下に抑えるとなっている物が多いですが、この3度という温度は非常に重要です。僕の買ったヴァージョンの正式名称はFate of the World: Tipping Pointというのですが、このTipping Point、つまりシステムにおいてある値を超えると変化が急加速し、それ以降は以前の状態に戻すことが非常に困難な閾値が、気候システムにおいて+3度と言われることが多いからです(+2℃とする人もいますが、それはもう達成不可能と考える人が多くなっているようです)。

 FoWにおいて、+3度前後で発生する大きな変化は、アマゾンの熱帯雨林の崩壊(+2.8度ぐらい)と、北極圏メタンの放出が ”an unstoppable force” になること(+3度)ですが、この2つが発生してしまうと、人間の化石燃料燃焼による二酸化炭素をほぼゼロにしても、大気中の温室効果ガス濃度は減りませんでした。またこの2つは不可逆な変化で、一度発生すると気温を3℃以下に下げても止まりません。ゲームではアマゾンは最大で年間約80億トンの二酸化炭素放出源(現在の中国、アメリカの排出量より多い)となりましたが、実際はどのぐらいになるのでしょうか。

 Woods Hole Research Center のDaniel C. Nepstad博士によるWWFのレポート、Amazon’s Vicious Cycles: Drought and Fire in the Greenhouse によると、アマゾンの熱帯雨林消失によって発生する二酸化炭素は2030年まで555億トンから969億トン、年平均だと約33~57億トンとなります。

また北極圏からのメタンを二酸化炭素に換算したものは、2011年12月にNatureに掲載されたフロリダ大学准教授Edward Schuurらの論文 ”High Risk of Permafrost Thaw” によると、2100年までに北極圏から排出されるメタンを二酸化炭素に換算して3800億トン。これは年平均で約44億トンとなります。

これにインドネシアの泥炭火災等から排出されている年約20億トンと、人間の化石燃料燃焼による排出量をx、海洋と森林が吸収できる量を年間110億トンとして炭素収支を計算すると、大気中の二酸化炭素濃度を増やさないための条件は以下のようになります。

アマゾンからの排出が33億トンの場合:110-(33+44+20+x)>0 よって x<13
アマゾンからの排出が57億トンの場合:110-(57+44+20+x)>0 よって x<-11

 最も少ない33億トンの場合、二酸化炭素を増やさないためには2012年時点での世界排出量316億トンを13億トンにまで減らさなければなりません。これは日本1国の排出量とほぼ同じです。また最も多い57億トンだったら、世界の排出量はマイナス、つまり排出した以上の二酸化炭素を吸収しなければなりません。CCSのような技術はまだ大規模には運用されておらず、森林面積も減少している状態では不可能なことです。

いずれにせよ、+3℃のティッピング・ポイントを超えてしまうと、気温上昇を止めることは何をやっても手遅れとなる可能性が高いと思われます。+3℃は今の文明を守るための「最終防衛ライン」と考え、それを超えないためには気候工学も含むあらゆる手段を早急に検討するべきです。

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環境政策ゲームFate of the Worldプレイレポート 2

YoutubeにあったEarth Dayプレイ動画です。



 Earth Dayシナリオの最大の特徴は、普通のシナリオでは多くの地域で環境意識がConsumeristから始まるのですが、それが最初からすべての地域でGreenであるということです。これは市民が環境保護政策に賛成するので基本的にやり易いですが、例えば石油の増産や気候工学が必要になったとき、それを行うと市民の支持を失うというデメリットもあります。GEOに対する支持が低下すると、その地域で政策を行うエージェントが行方不明になったり、支部の立ち退きを命じられたりするので、注意が必要です。

 イージーモードでプレイしても、すぐに気温上昇がが3℃を超えてしまい、事実上のゲームオーバー(3℃を超えると北極圏のメタン放出が急加速し、アマゾンの崩壊が始まる)になるほどの難易度です。何度か試行錯誤してやっとクリアーできた時の方針は、

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・序盤はトービン税(通貨取引に課せられる税)を可能な地域すべてに課し、中国とインドの石炭利用を低減するために原子力の推進、一人っ子政策等を行う。多くの地域で排出権取引やエネルギーの効率化を図る。ラテンアメリカと東南アジアでは森林を保護。日本、ヨーロッパ、アメリカで新技術の開発。アフリカでは治安を強化。

・2030年ぐらいに欧米でスマートグリッドが実用化されるので、できるだけ多くの地域で導入し電力を効率化する。再生可能エネルギーや、バイオ燃料は効果が薄いので、資金はほかに回すほうがいい。

・2040年ぐらいに日本で第四世代原子炉とCCS(Carbon Capture & Storage、Card Captor Sakuraではない)が実用化されるので、原子力と、二酸化炭素の回収、貯蔵を推進する。この2つの技術が中盤のカギとなる。また同時期に日本では気候工学の代表的手法、エアロゾル散布が実用化されるので、今は使わないにしても2~3の地域に導入しておくとよい。

・石油は序盤で、利用状況にもよるがウランも21世紀中盤過ぎぐらいにピークを迎える。しかし再生可能エネルギーは不十分なため、増産と効率化で引き延ばしを図らなくてはならない。

・21世紀後半ごろから世界恐慌が発生し始めるが、短期間で終わればそこまで大きな影響はない。その時期に開発される量子コンピューターで、GDPを増やしておけば、歳入の増加につながる。

・22世紀に入るぐらいで気温上昇が3℃近くになったので、エアロゾル散布を2か所で実行。気温は0.2~3℃ほど下がるが、続けないと効果がない。住民の支持を失うので、支持をあげる政策を使うかいくつかの地域で持ち回りでやることになる。

・22世紀でカギを握るのは第1世代ナノテクと、AI(人工知能)。ナノテクで人工樹木を作って二酸化炭素を回収し、AIで市場や天候の予測を行いリスクを低下させれば、住民の支持も上昇する。

・同時期に核融合も開発されるが、導入と利用にコストがかかる割には出力は大きくないので無視。宇宙開発は宇宙太陽光発電以外はほぼ役に立たないみたい。

・支持率が低下してきたら、バイオ燃料やシェールガス等の利用禁止を行えば全世界でかなり上昇する。特にメタンハイドレートは採掘事故で崩壊して大量のメタンガスを排出するので、早々と禁止すべき。

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 プレイしていて実感したのは、序盤の再生可能エネルギーの乏しさと、気候工学の強力さです。集積型太陽電池などの技術が進歩するまで、十分なエネルギー源にはなりえませんでした。すべてのエネルギーには長所と短所があり、それらをバランスよく組み合わせることが最良の選択でしょう。また気候工学は+3℃のティッピングポイントを超えそうになるときに最後の手段として使いましたが、結局最後まで使い続けることになりました。強力であるがゆえに依存性の強い技術で、使う人間のモラルが問われることになります。

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環境政策ゲームFate of the Worldプレイレポート 1

 オックスフォード大学Myles Allen教授の研究に基づいて制作された環境政策ゲーム、Fate of the Worldを購入し(19$ほどでダウンロードできます)、9つのシナリオのうち主要なものをクリアしたので、そのレポート。



このゲームでは世界は12の地域に分けられ、それぞれの人口、GDP、産業の比率、エネルギーの生産と消費、教育や技術の水準、出生率、平均寿命、人口の構成、環境意識など無数のパラメーターが複雑に絡み合い、政策によって変化します。政策は環境、技術、エネルギー、福祉などに分けられ、再生可能エネルギーの推進、新技術の開発、排出権取引、医療水準の引き上げ、治安の強化などさまざまで、技術が発展するにつれて月の開発やナノテクノロジーによる医療などSF的なことも可能になります。

 プレイヤーは、2020年の環境サミットで設立された超国家的組織GEO(Global Environmental Organization)の代表となり、それぞれのシナリオで設定された目標を、ある年度までに達成しなければなりません。9つのシナリオにはアフリカのHDI(Human Development Index)を上昇させるチュートリアルから、2200年までに気温上昇を3℃以下に抑えるといったグローバルで長期的なものまであり、中にはもし二酸化炭素と気温上昇が無関係だったら、というフィクションのものまであります。今回レポートするのはその中の中心的なもののひとつEarth Dayです。

 Earth Dayでは、もし2020年の環境サミットで世界中の人に意識革命が起こって、世界が気候変動解決のために立ち上がったら、という設定です。勝利条件は2200年の気温上昇を3℃以下に抑え、HDIの平均が0.5ポイントを下回らない(HDIは一人当たりGDP、平均寿命、教育水準で計算され、日本は0.912です)、世界12地域の半数以上のGEO拠点を失わないというものです。

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ゲームで学ぶ気候変動、エネルギー問題、経済

 気候変動問題が簡単に解決できない理由として、それが例えば気温と温室効果ガスの関係のような科学的問題だけでなく、人間の経済活動やテクノロジーの発展、資源やエネルギーの利用などが絡み合った複雑な問題であることが考えられます。これらを総合的に扱うには、例えば『成長の限界』(1972)のデニス・メドウズが利用した、システムダイナミクスを利用したコンピューターシミュレーションなどが適していますが、これを簡略化し、コンピューターゲームにしたらどうなるでしょうか?

 BBCのサイトで公開されている、Red Redemptionというゲーム会社が制作したClimate Challengeというブラウザ・ゲームがあります。 http://www.bbc.co.uk/sn/hottopics/climatechange/climate_challenge/ BBCとオックスフォード大学の研究者と共同制作されたもので、プレイヤーはEUの政治的指導者となって、1990年から2090年までの100年間、様々な政策を駆使して気候変動の対策を立てることになります。具体的には10年で1ターンとなり、政治、貿易、地方自治体など6つの部門から利用できる政策のカードを選び、それにより二酸化炭素排出とともに資金、エネルギー、水、食料のパラメーターが変化します。ただ排出を減らすだけでなく、市民に受けの悪い政策をとれば選挙で落選し、経済を無視した政策だと失業者が増加するというように、バランスのとれた政策が必要とされます。

 選択可能な政策は、核融合の実用化や月の植民地化といったハイテクノロジー推進もあれば、雨水利用の推進や過剰包装反対のキャンペーンなど身近なもの、またオリンピックを開催したり年金支給年齢を引き上げたりといった政策も多く含まれています。各パラメーターは簡略化されていますが、実際の研究データに基づくもので、ごみ埋め立て施設を利用したバイオガス発電が意外と効率が良かったりといろいろな発見があります。

 大体1プレイ30分ほどでできるので、ぜひやってみてください。環境と経済、エネルギー等の問題のバランスをとることがいかに難しいかわかると思います。Red Redemptionは、さらに本格的な環境政策ゲームFate of the Worldを発売していて、 http://www.fateoftheworld.net/ こちらも近々手に入れてプレイしてみる予定です。



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プロフィール

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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