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航空温室効果ガスの北極圏への影響

 仕事柄、大学の英語の授業で用いるテキストのサンプルがこの時期になると多く送られてきます。僕は今学部の授業は半期の1コマしかなく、使うテキストも工学関係に限られるのでそれ以外は目を通すことはほとんどありませんが、たまたま科学関係の読み物のテキストを開いたら、How aircraft emissions contribute to warmingという内容の記事がありました。それは2009年のNatureに掲載された記事であり、航空機の気候変動、特に北極圏のそれに対する影響についてでした。元の記事は http://www.nature.com/news/2009/091221/full/news.2009.1157.html で読めます。 

 航空機の温室効果ガスの重要性についてはこのブログでも何度も書いてきましたが、この記事で紹介されている研究の重要な発見は、それが特に北極圏に大きな影響を及ぼしているということです。スタンフォード大学のDr. Mark Jacobsonは2004年から2006年までの航空機による温室効果ガス排出のデータを基に、その大気の組成等への影響、特に黒色炭素を考慮したモデルを作成しシミュレーションしたところ、北極圏の温暖化の15~20%が航空機が原因であるという結果になったそうです。

 航空機を利用する機会は一般の人はそう多くないと思いますが、そのわずかな利用だけで北極圏の気温上昇の1/5に寄与していることになります。このブログでも書いているように、北極圏は地球の気候システムのいわば「急所」であり、ここの気候システムが不安定になると地球全体に影響を及ぼします。国連の専門機関は、2020年までに航空温室効果ガスの規制の導入を決めましたが、 http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0500V_V01C13A0000000/ それでは遅すぎます(AMEGによれば、北極海氷の2018年までの消滅確率は95%)。一刻も早くこの問題が注目され、北極圏の気候システムの崩壊を阻止する必要があります。

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航空排出についての提案

 昨日大学、学会の航空機利用の温室効果ガス削減に関する提案をまとめ、2つの学会に送り、どちらからも検討するという返事をいただきました。以前の記事にも書いた通り、東京大学を例にとれば大学の温室効果ガスの約1/3が教職員等の航空機利用から排出されていることを考えると、無視できる問題ではありません。今後大学や環境系の学会などにも送ろうと思っています。

 そろそろ前年度に僕が生活から排出した温室効果ガスのオフセットをしようと思い、計算中です。再生可能エネルギーへの移行はお題目になってはいけません。ネットでいろいろ論じてもその効果がどのぐらいか未知数ですが、カーボンオフセットなら確実に何トンもの温室効果ガスを減らしてくれます。率先して自腹を切って意思を示すことで、変革のための意思表示ができると思います。

大学教職員、学生の航空温室効果ガス

 大学は気候変動やエネルギーの先端的な研究の場であるため、他の場所よりも温室効果ガスの規制を進めているところが多いと思います。僕の勤めている大学でも、エアコンの温度調節やリサイクルなどを行っています。しかし大学の環境報告を読んでみても、「航空」の文字はありません。大学教職員や学生が学会出席等、出張による航空機利用によって排出する温室効果ガスはどのぐらいでしょうか?

 東京大学がこれについて調査をしていたので、それを基に考えてみます。報告書はhttp://www.ags.dir.u-tokyo.ac.jp/suscam の「キャンパスにおけるサステイナビリティ評価手法の体系化」からダウンロードできます。

 報告書5ページ図-3、表-3によると、平成18年度における東京大学の学内でのエネルギー利用(電力、ガス、重油)から排出された温室効果ガスは合計138,631トン、学外(航空、鉄道)からは23,899トンでした。出張、会議出席などでの航空機利用によるものは23,176トンですが、それをRFI=2.7で地上での二酸化炭素に換算すると62,575トンとなり、学内の放出量の約45%にも及びます。大規模な実験設備や大型コンピューター等を有する東京大学は、他の大学よりキャンパス内の放出量が多いと予想されます。それに対しての45%ですから、文系が中心の大学だと航空機利用の排出量の割合はさらに増えるでしょう。

 大学の研究者は分野にもよりますが、海外の学会出席などで他の職業の人よりも航空機の利用が多い傾向にあります。教職員は大学の費用で、学生でも補助金が出たりするので、無料もしくは普通よりも安く海外に行くことができます。教職員の中には、学会に家族同伴で出席する人もいます。もちろん社会のために重要な研究のために出席することは大事なのですが、国際学会をもっと簡単に、環境負荷を下げて参加することができるように、テレビ会議のような方法を導入することはできないのでしょうか。

航空機温室効果ガス問題の難しさ

 本日、僕も授業を担当している大学の「国際英語プログラム」の説明会で、授業の説明の後に北極圏の現状とカーボンオフセットについて話させてもらいました。このプログラムに参加する学生は海外渡航を希望している人が多く、その際に大量に排出することになる航空機の温室効果ガスについて知ってもらいたいと思ったからです。プログラムに不利になるにもかかわらず、発表を許可してくださった担当の方に感謝します。

 ですが、結果は残念なものでした。貴重な機会なので充分に準備をして臨んだのですが、僕の前に授業説明をした二人の外国人講師がだいぶ時間を取ったことなどで、僕の発表の時には終了予定時間を超過していました。昼休みだったため、時間がない学生は帰ってよいと言ったのですが、一番前に座っていた外国人講師が早々と席を立ち、また多くの学生が帰り支度を始めたため、残っていた3分の1ほどの学生に説明している時には騒音でろくに発表が聞き取れない状態でした。それでも聞いてくれた学生には感謝します。説明会の前に、内容をまとめたハンドアウトを配布してもらったのですが、どのぐらいの人がそれを読んでくれたのでしょうか。

 僕はある程度はこの結果を予測していました。航空機の温室効果ガス問題は、環境団体ですら一種のタブーとしているように感じていたからです。過去にいくつかの環境団体の人にこのテーマを提案して、黙殺されたり皮肉を言われたりしたことが何度かあります。ましてや、英会話という航空機がなければほとんど成り立たないものを学んだり教えたりする人たちにとってはなおさらでしょう。

 この問題がタブー視される理由として、航空機の排出規制はビジネスとして成り立たないことが考えられます。自動車や住宅などの分野では、ハイブリッドカーや太陽光発電などの推進により、環境に貢献すると同時に利益を上げることができます。しかし、航空機はハイブリッド化や電気化がほぼ不可能です(航空機にはブレーキがないため。また電気飛行機はセスナレベルが限界)。ボーイング787は20%ほど燃費の良い航空機として期待されていましたが、多くの不具合によりいつ飛行が再開されるかわかりません。

 しかし、ビジネスにならないから、誰も得をしないからと言って無視してよい問題でしょうか。世界の航空機による温室効果ガスは、年増加率5%(東京大学岡野まさ子准教授の資料より)として計算すると、RFI=2.7で計算して2013年現在年間26億トンにも及びます。これはアメリカの年間55億トンの半分で、ロシアやインドの排出量の二倍となります。2025年には40億トンと予想され、地球が吸収できる実質90億トンの約半分となります。

 「国際化」はほぼ無批判に正しいこととされ、それに異を唱えることは多くの人の批判を呼びます。僕も他国の人との交流や、外国文化に直接触れることはとても大事だと思います。しかし、その負の側面は見て見ぬふりをされています。子供に借金を残して海外旅行に行っている大人が国際化と言っても、その言葉に説得力はありません。その借金が、温室効果ガスという目に見えないものであっても同じはずです。 

航空機の排出する温室効果ガスについて 2

 東京―ニューヨーク間の温室効果ガス一人当たり6440kgを、他の温室効果ガスと比較してみましょう。平均的燃費15.5kmの自動車を時速40kmで1時間走らせると、二酸化炭素約6kgが放出されるので、約1070時間、つまり1日1時間自動車を運転する人が約3年で放出する量です。また、トヨタの場合プリウスを生産するのに約6t、それ以外のガソリン車で約3tの二酸化炭素が放出されるので、東京―NY間で、プリウスなら1台、それ以外なら2台の自動車を作るだけの温室効果ガスが出ることになります。http://ecochu.goo-net.com/what/article_01/ 参照。

 よって、航空機利用を減らし、代わりに電車等を利用することが非常に効果的な温室効果ガス削減手段となります。たとえば東京―大阪間のような近距離なら、航空機でも新幹線でもそこまで時間に大きな差はないはずです。海外に行く場合でも、例えば京都からコペンハーゲンまで行くのにシベリア鉄道を利用している気候変動の専門家もいます http://econavi.eic.or.jp/news/detail/22303 。どうしても航空機を使わなければならない場合は、根本的な解決にはなりませんがカーボンオフセットで相殺することもできます(イギリスは、公務員の航空機利用をオフセットしているそうですhttp://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=17707&oversea=1 )。 

 70億の人間のうち、航空機を頻繁に利用するわずかな人たちがこれほど多くの温室効果ガスを排出しているにもかかわらず、この問題はあまり取り上げられることはありません。おそらく、航空機を今までのように使えなくなることで不利益を被る人が多いからでしょう。航空機が利用できないと、外国に行けなくなり国際化の妨げになる、という反論がありそうですが、私は決して利用すること自体が悪いとと言っているわけではありません。使う場合はそれが環境に与えている影響を良く考え、それに見合うだけのものを渡航から得てほしいと思っています。
プロフィール

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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