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はじめに―異星愛者の孤独 3

 なぜ生きるのか、という問いに対しては多くの人はシンプルで、説得力のある答えを持っています。それは次の世代がより幸福に生きることができるように、個人的には遺伝子、記憶、愛、社会的には文化、科学、道徳などを引き継ぐこと。しかし僕はこの答えだけでは不十分だと思っていました。人間の活動の場は半径約6000kmの球体、平均気温15℃程度の地球という奇跡的に安定した環境を持つ惑星の上にほぼ限定され、そこに住む70億の人間も身体的特性や思考、論理、価値観など巨視的なレベルでみると特に大きな違いはありません。僕たちは本当の他者、つまり地球と異なる環境で独自の進化を遂げ、独自の社会、科学、文化を発展させ、しかし僕たちと同じような孤独を感じている存在との出会いを、人間という種として無意識のうちに求めているのではないでしょうか。

 それならば、なぜ生きるのか、についての答えは明確になります。つまり僕たちの遥か未来の世代の誰かが、遥か彼方の友人と出会うことがあるかもしれない。その出会いの可能性をつぶしてしまうことがないように、僕たちは現在の社会を迫りつつある大きな危機から救わなければなりません。それは自分たちの子孫のためだけではありません。浪費と争いの果てに、まるで自殺のようなやり方で何億年もかけた進化、何万年にもわたる文明を滅ぼしてしまうのは、僕たちの存在を必要としている、遠くの友人に対する裏切りでもあるからです。

 想像してみましょう。あなたが乗っていた客船が沈没し、無人島に一人で流されます。あなたが何年、何十年もの間、そこで孤独に暮らしていると、瓶に入った一通の手紙がたどり着きます。それはほかの生存者の手紙で、彼または彼女が住む島の場所が描いてあります。あなたは数か月もの間かかって苦心してボートを作り、危険な海原に乗り出します。そして何度も漂流の危機や水、食料の不足を乗り越えてやっとその島にたどり着いたとき、手紙の差出人が死んでしまっていたら、それも自殺だったらあなたの絶望はいかほどのものでしょうか。
 
 そして、人間はもう「瓶の中の手紙」を出してしまいました。SETIプロジェクトでは様々な星に対して電波のメッセージが送られ、惑星探査機のパイオニアやボイジャーには、地球の文明を記す金属板やレコードが積まれています。ラブレターを出した以上、たとえ返事がどのようなものであれ、僕たちはその返事を待つ義務があります。
 
 これから僕たちは、気候変動という歴史上最大の苦難を経験することになるでしょう。ですが、覚えておいてください。人間という種が生き延びることを願っているのは、地球の人間だけではないことを。会うことはできないかもしれないけど、同じように星空を眺めながら僕たちのことを思っている誰かがいるということを。
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はじめに―異星愛者の孤独 2

 地球外の生命体への憧れは、いくつかの文学作品に描かれてきました(これよりネタバレ注意)。たとえば日本ハードSF界を代表する作家の一人、野尻抱介の『太陽の簒奪者』(早川書房)のヒロイン、白石亜紀。名前から白亜紀を連想させるこの科学者は、放射線障害の危険のある地球外任務に志願し、知的生命体とのコンタクトのためにその半生を費やします。そして全く異なる思考パターンを持つ生命体とつかの間の会話が成立したとき、彼女が本当に言いたかったことはただ一言、「いっしょに暮らせないの?」という言葉でした。あるいは、この小説の解説を書いたライトノベル作家、谷川流のおなじみ『涼宮ハルヒの憂鬱』(角川書店)のヒロイン、ハルヒが中学生のエピソード『笹の葉ラプソディ』。七夕の夜彼女が学校に忍び込んで、織姫と彦星にあてて校庭に描いた奇妙な記号は、宇宙語で「私はここにいる」であったことが後に分かります。
 
 もう手に入りにくい作品になりましたが、有名ミステリ作家夏樹静子の『ドーム―人類の箱舟』(角川書店)。核実験の影響で白血病に侵されたヒロイン、ジュディは天体観測が趣味で、ほかの惑星の文明とのコンタクトに思いをはせます。彼女の死の間際に、建築技師である彼女の恋人が残したアイデアは、やがて核戦争後も人類という種を存続させるための巨大建造物「ドーム」という形で実現します。また映画だったら、天文学者にして作家でもあるカール・セーガン原案によるジョディ―・フォスター主演の『コンタクト』。SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトの科学者エリーは、こと座のヴェガから電波で設計図が送られてきた移動装置に乗り、ヴェガへと旅立ち亡き父の姿をした異星人と出会います(ネタバレ注意ここまで)。

 彼女たちのように(なぜか女性ばかりですが)、同じ地球人だけではなく地球人以外に対する深いコミュニケーションや理解を求める人たちを、同星愛者に対する異星愛者と呼んでもいいでしょう。

はじめに―異星愛者の孤独 1

 星空を見上げた時、言いようのない不安と孤独を感じたことはないでしょうか?子供のころから星が好きで、小学生の時小遣いをためて買った望遠鏡で、ベランダから星ばかり見ていた僕は時々それを感じていました。たとえば山の中などで、人間の気配をあまり感じない星空を見たときに、恐怖に近いほどの感覚を覚えたことがあります。知識として僕たちの住む地球が、銀河系の周縁部に位置するほんの小さな一点であり、その銀河系もさらに大きな銀河団の中のごく小さな一部で…、ということは知っていましたが、圧倒的な広がりを前にしてそれを身を持って実感しました。

 この自分の存在が無に感じられるような恐怖は、死に対する恐怖とよく似ています。僕は物心つくころから、よく死について考えていました。自分はあとどのくらい生きることができるのか、時間とは何か、数十年ほどで死んでしまうなら、なぜ生きるのか。そういったことをずっと考えてきました。僕が大学で物理学を専攻したのも、この死に対する意識と関係があったのでしょう。永久不変である物理法則の解明に貢献することで、少しでも死を乗り越えることができるような気がしていましたが、それは錯覚だとわかりました。

 そしていつのころか、夜空を眺めたときに無限に近い広がりの中で、小さな点に過ぎない惑星に縛り付けられているという感覚とともに、自分と同じ孤独を感じている、何万、何億光年も彼方にいるかもしれない、だれかを求める気持ちが生まれていました。

 地球外生命体の存在というとSF的ですが、僕たちが現に存在している以上、宇宙で生命が生まれる確率はゼロではありません。問題はそれが実際どのくらいの確率になるかです。ドレイクの方程式という有名な数式は、銀河系内に存在する通信可能な文明の数を単純な掛け算によって求めますが、いくつかのパラメーターを仮定すると大体10個ほどとなるそうです。この数字の信ぴょう性はあまり高くないので、もしかするとこれよりはるかに多いかもしれません。

このブログについて

このブログは、2012年の6月に膵腺房細胞癌というきわめて珍しいすい臓がんと診断され、現在闘病中の中年男が、以前より関心を持っていた気候変動、特に北極圏の問題と気候工学についての情報と、闘病の記録を発信していくために、2013年3月2日に開設しました。ハンドルネームは池澤夏樹の小説『スティルライフ』より。

大学では物理学を専攻して、現在独学で大気科学について勉強中ですが、専門家ではないため、間違い等あったら指摘お願いします。僕の関心の中心は、気候工学(地球の気候に工学的手段で介入すること)の倫理的、社会的側面といった、どちらかというと文系寄りの問題にあります。

どのぐらい更新できるかわかりませんが、地球環境に興味のある方もそうでない方も、読んでくださったらとてもうれしく思います。

プロフィール

Author:大熊座から来た男
HNは池澤夏樹『スティル・ライフ』より。
ブログ名は、ツンデレ美少女風に読んでください。
CV:今井麻美、斎藤千和推奨。

膵腺房細胞癌という非常に珍しい病気と闘いながら、気候変動(特に北極圏問題)や気候工学(ジオエンジニアリング)について学んだ情報を発信していきます(体調不良のため、最近は闘病ブログになりつつあります)。気候学は独学で勉強中なので、いろいろとご指摘お願いします。

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